エコマンションの建設日記「第1章−6.不動産業についての持論と設計の基本」 | |||||||||
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話しを少し戻します。 かねくら(株)本体とは別に、平成2年12月私はヒトミコーポレーションという宅建業の有限会社を設立しました。ちょうど、熊本に帰るのを決意した頃でした。 福岡では、不動産会社にアルバイトで勤めたり、簿記学校に通いました。簿記は面白くてとうとう税理士試験の簿記論まで勉強したほどです。 市野先生の指導のもと、自分で会社を設立するのも、経営者としての一つの勉強でした。 「会社は創るときが一番簡単で、次が辞めるとき、そして存続するのが一番難しい。」これは、私がお会いした経営者の方々が口を揃えておっしゃった言葉です。 その創る作業をできるだけ人任せにせず自分でやる。また創った後は、自分で帳簿も管理し、もちろん営業もする全て一人でやってみる。これは自分にとって大きな力となりました。会社や経営の仕組みのようなものがおのずと身についていきました。 バブルがはじける頃でありながら、お陰様で、父や親戚・知人を通じていろいろ仕事を紹介して頂きました。不動産は一つとして同じものはなく、つまり全てに個性があるのと同じです。またお客様のプライバシーの問題もあり、ほとんど日中に仕事は動きません。若さと女性だという事は確かにこの業界でハンディではありましたが、宅建業の先輩や、父の指導のもと、真面目に取り組む事によって、一人でやるには十分な仕事をこなさせてもらいました。 宅建の仲介業は、仲介終了時に半分終了、その後必ずといっていいほど、またさまざまなご相談(クレームも含め)があります。仲介手数料をもらったら終わりではなく、それからが後半の仕事の始りだというのが私の持論です。この姿勢だけは崩さずがむしゃらに仕事をしていたというのが当時の記憶です。 しかし、何かが違っていました。自分の中で。本当にこれが自分の一番やりたいことか?という自問自答をくりかえしていました。肝心の自分の個性が活かせることとは違うなあ…という何か満たされない気持ちが常にありました。また、自分の仕事に巾を持たせたくて、インテリアコ―ディネーターの勉強も始めました。 玉名では、妹を中心に老人医療・介護に取り組んでいました。それこそ若い女医である妹にはハンディも大きく、いろんな意味で逆風も吹いていたと思います。ただ当時、老人医療・介護は、まだ陽のあたらない分野ではありましたが、取り組むほどに10年後の大きなニーズが見えてくる分野でもありました。宅建業としての私にとっても、お客様と話せば話すほど、バリアフリーリフォームという分野が見えてくるのでした。 私は、各勉強会に積極的に参加しながら、東京を中心とした都心に足を運びました。もう古くから経営されている民間老人ホーム、できたばかりの民間老人ホーム、また公営の老人介護施設など見学してまわりました。「半端な分野じゃない。」当時の私の率直な感想でした。 そしてかねくら(株)本体のジリ貧状態にジダンダを踏みながらも、私なりに5年後は?10年後は?と必死でその答えを探していました。しかし、それはあくまでも「事業の存続=利益」を前提に捜し求めていたというのが事実です。 その私を待っていたのが、第5回で述べた妹の死であり、かねくら(株)本体の廃業でした。 廃業の残務整理のころ、妹の死からようやく立ち直り、またその遺志を受け継ぐため、一周忌を終えた平成6年の夏から、「老人保健施設とデイケア施設」の建設計画が本格的に動き出しました。 私は亡くなった妹の代わりに、婦長をはじめとするスタッフといっしょに、熊本の各施設を訪問したり、勉強会に参加したりして、父や主人とともに設計計画の中心にいました。 設計は、図面とにらめっこしながらありとあらゆる想像力を膨らませて、中で利用する人の目線や動線に気を配ることでもあると思います。たいへんではありましたが、私にとってはとても楽しい仕事でもありました。 お陰様でこの時の経験は、のちの「ECO―WING21」の設計・計画に大いに役立ちました。そしてこれを機会にお会いした、厚生省「病院管理研究所」の設計の先生方から多くの事を学ばせていただきました。 設計に当たって一番考えなくてはならないのは、あくまでもそれを利用する人の使い勝手であり、また利用する人の心のやすらぎや、安寧であること、それを一生懸命、東京から来られては、図面に少しでも反映されるようご指導頂きました。 ただ見栄えの良い箱を作ればいいというものではありません。ただ大きな建物を作って散策できる庭を作ればいいというものではありません。ましてや、その利用する人が高齢だったり、痴呆であったり、そして病人であったり、社会的に弱者といわれる人達の場合、その使い勝手も、目線も、動線も、もっともっとたくさんの配慮が必要になってきます。 「自分が建物を利用する人の立場に本当に立つことができるかどうか」それが設計における重要なポイントであり基本であるということを学んだのでした。 |
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